連句(2024.1.22~2024.1.24)

 蚊にでも刺されたかしらん、と思って背中を掻き掻き、どうも筋肉の収縮を越えた硬さだと鏡で確かめてみれば、それはタケノコだった。いつかこれが立派な青竹になって中からお姫様が僕の背に生まれ落ちたのなら、彼女を捕まえた天の使者が帰る先は生物教師の解剖台の上が良い。彼女は授業で解剖した鳥もイカもアルコールランプの上のフライパンで焼いて食べた(前者は塩コショウ、後者は醤油で)。僕から生まれたかぐや姫にもメスを向けて彼女は美味しく頂くだろう。プルンとした胃の中でかぐや姫(私が作りました! の生産者シール付き)は花を咲かせ、生物教師もろとも茶色く枯れる。そこからまたいつか生えた竹を槍にして僕は京都駅大階段を駆け上るのだ。頂上にある池にクモの糸を垂らす釈迦の胸にその穂先を突き立てる為に。金メッキ仕立ての手から糸は離れ、地獄に真っ逆さまの生物教師の悲鳴が池から聞こえる。ほとりを歩くクモに明日はもっと良い日になるよね、と尋ねれば、坂道から踏切へジャンプするのではなく自転車で江ノ電と並走して時をかけてきた筒井康隆がヘケと言った。ユーミンにはまだ早い。

 

 秘技頭蓋骨抜きを施されたハトは軽くなった頭から上昇志向をほとばしらせて、太陽黒点こそがタンホイザーゲートだと信じて羽ばたく。抜かれた頭蓋骨は唐揚げにされて胸に穴の開いた男に振る舞われる。自称魂喪失者はそれを食べれば胸に蓋が出来ると信じてパクつくが、その甲斐なく穴からはビールが零れる。実際には、有史以前から虚実の淡いを飛んでいる鳥が男の魂を蹴落として托卵していたというオチに過ぎず、既にその卵も孵化して残されたものは穴だけだった。蠕動する桃色の羽で空間を前から後ろに押し流すその永久保存版の鳥は、スシローのレーンの周波数に同調したもののみ認識可能なチャンネルで羽ばたいている為、180円以下のネタたちにはやがて来る千円王国への導として崇められている(黒色の皿には別種の信仰が質量となって積載されている分、僅かにその周波数が乱れてしまっている)。

 

 苔むした頭の教師は黒髪丸眼鏡乙女学の権威だ。牛乳瓶の底のようなレンズの眼鏡をかけた天照大神が表紙に描かれた教科書を開き、今日はフレームを極限まで細くした時に生じるレンズを支えているがこの世に存在しない無限ゼロの縁の行方について熱弁している。
 私はその答えについて既に知っていて、それはIQ0(=∞)に至れないことを嘆くIQ2のサボテンとの対話の中で辿り着いたものだった。けれど私には彼のような針がないので、どうすれば私たちを隔てる0.02mmWワールドサイズのこの膜を破れるのかしらという疑問で頭がいっぱいだった。
 サボテンには斬魄刀みたいな名前が多いのよと言うと、僕は卍解出来るよとあっけらかんと答えて彼はその歴史に名を刻みに尸魂界に旅立ち、膜と私だけが残った。こんなの「砕けろ」という呪いの言葉まで取られちゃって、もうね。


 サボテンには本当に白竜丸という品種があります。これが卍解すると白竜丸綴化になります。これはすべて本当の事です。