2024.3.5

 画面の中の美少女に萌えないのは、触れられないのに触れなければ得られない快への欲を抱かせる構図がどうも合わず、巨きなものに心惹かれるのはそもそも触れられる対象ではなく、ただ畏敬の念を抱くしか出来ないからかと考えた。画面の中の全長18mだか40mだかの巨人と遠くに仰ぎ見る山嶺は同じ。

 美少女には萌えないが眼鏡には萌える。それもたぶん同じ理由で、画面の中の眼鏡も今目の前の眼鏡も触ってはいけないので。

 そんな感じ。

2024.2.14

フリーホールの詩

。で話は終わるけどアリスは穴に落ちてからが本番です
(落ちる 落ちる)
フォーリナーがフォールしたホールを開けたオープナー
(落ちて 落ちて)
神は3日で穴開けて3日で埋めて最後の1日に寝落ち寸前に世界を作った
(落ちた 落ちた)
埋め忘れの穴にフリーホール中詠む自由律俳句
(落ちろ 落ちろ)
空から落っこちてきたあの娘が見落とすところに三点着地
(落ち込む 落ち込む)
穴埋め問題 苦し紛れの冷たいギャグで滑って転んで
(落ち着く 落ち着く)
お力になれずにすいません 穴があれば入って思ったより居心地良くて君を誘いたい
(オチはない オチはない A Ah)

2024.2.12

 炎上するアストンマーチンの中で炊かれる粒立ちの良い米一粒一粒に刻まれた王国で暮らす尾を引く赤いでんぷんの糸で結ばれた少年少女。天体整地用最終ジャガーノート型彼女が地面の皺を伸ばし 少年はおもむろに靴を脱いですり減ったソールの空虚に明日食べるパンの言い表しようのない柔らかさを感じ取る。

 おおよそ人類史とは固くて重たいものを早く動かすことの技術史であり 柔らかくて軽いものは冷遇される傾向にある中で少年は完全な軟体の加速度に心奪われ ジャガーノート型彼女はガブルルルルと嫉妬に震えて液状化し 振動の熱で蒸発した。熱されて上昇する気体と赤い糸で繋がれたままの少年はカーマンラインを超え 無限軌道にならされた三代前の地球を見る。つやつやに磨かれた星から出来る辛口大吟醸の香気に酔って前後不覚の少年少女は米粒の輪郭からほんの少しだけはみ出し 炎上するアストンマーチンの中でピザを焼こうとするレーサーを宇宙人だと勘違いして オリーブを投げつけた。それを啄む鳩こそが稲穂に金メッキを施した異星よりのアンチパン(bread)の使者だと言うのに。

2024.2.7

 医療技術の発達により人の体内で発生する諸現象は明文化され 七転八倒九龍城もかくやという痛みの乱丁の原因が体内物質が凝縮して出来た胆石結石石炭がコロコロローリングする事によるものだと読解された。

 となれば作品進行において矛盾を生む障害物は撤去 ならびに再利用可能であればとりあえず試してみるというのがお天道様のお役所仕事であり そうして取り出されたもののうち石炭をまずは焚べてみて生まれたこの蒸気文明。ブッシュブッシュと雑草のように空に生い茂る白煙の下で 蒸気駆動の仏師が電気風呂の喪失を嘆いている。近場の銭湯では電気風呂は撤去されサウナが増設 汗をかかない蒸気機関者はあのバイブレーション感覚を夢見る間も懐かしみながら 仏を掘る。ガッショガッショと地面を掘れば合掌した仏像が現れる。仏師は満足げに顔面の人工筋肉を動かして仏を砕いた。亀裂から祈りが吹き出し 凝固。コロコロと採掘現場を転がる祈りは高品質なエナジードリンクの原材料であり それを飲みすぎると人は体内に石炭を作る。

 採掘資源である仏像はあと百年もすれば掘り尽くされると推定されており 人類は新たな採掘地を他の星に求め 宇宙進出用の銀河航行用蒸気機関車を目下開発中。

 天の光はすべていつか燃える石炭なのである。

この15日間と最近に含まれる明日以降に書くものについて

 最近の事とはつまり「最も近い」事であり、今日から最も近いのは昨日と明日である。つまり我々は世間話の中で既に自分の未来を確定事項としているのであり、例えば「最近紅茶にハマっている」のならば少なくとも明日までは紅茶にハマっていなければならないのではないか。仮に明日起きてもう紅茶はいいやとなっていればそれは「最近」紅茶にハマっていたのではなく、昨日までという表現が正確になる。



 元々私は影響を受けやすい性格でありその影響は書くものにも反映される(内容文体問わず)。それならば、なまじ影響を受けているとバレないように理性で押し隠すのではなく、自動筆記的に最近見たものの影響、それに対する思考思惑思想、無意識下からにじみ出る何かしら、そういったものを区別せず分別なくぶちまけてしまえや、という気になってとりあえず実際にそうしてみている。そういう書き方をしていると読点とは非常に邪魔のように感じられて、可読性へのせめてもの情けとしてスペースを開けるようにしているが本当はダダッと濁流のように書きたい気持ちがある。
 だから餅の話をしている時は餅を食べたのだろうし、巨人、飛行機械、サボテン、それらについてもそういう塩梅で書かれている。ルートはシンプルだがすべてを一本化するのではなく、むしろ滅茶苦茶にラインを増やして入り組ませることで結果として出来たスパゲッティコードから何かをすくい取れたらという試み。
(くだらないものが好きで
くだらなくて格好いいものが大好きで
くだらなくて格好いいもので天地創造したくなる)

2024.2.5

 四本脚の蜘蛛は人と虫どちらに近いのかと問いかける将軍様は 36インチのテレビから引きずり出される時に頭をぶつけて怒り心頭のスフィンクスの二面ダイスが3回連続で素数を出す確率はいくらかという謎かけに答えられず 代償としてのっぺらぼうの大いなるマネキンとなった。
 時と心とカフェオレに可逆性は無いが 全身白紙の巨人はタブララサマンとして決して混ざらない直立不動のミルクのように世界の攪拌に抗っている。タブララサマンはそうしてせき止めたこの星の自転のエネルギーで気ままに奇跡を起こし かねてより切望していた気になる子たちにカタツムリの殻を背負わせるという願いを叶えた。
 渦巻き被害者の会の入会者は実際に渦巻きを背負っている人物よりも遥かに多くなり 潜在的に渦巻きを抱えている人物は思いのほか多かったのだとその時気づく事になる。生きるマドラーだという事であのそり立つ白濁した巨人の目を回そうと思い飛び込んでみれば会員制乳海だったことが判明。渦巻き被害者の会の会員は乳海入会者にもなり 須弥山かわりのサボテンの塔が屹立する。
 タブララサマンがこっそりと蓄えていた自転のエネルギーは崩壊し 辞典という形而下の形を持って描写される。あらゆる文字が隕石のように文脈を無視して飛び込み 修正の赤ペンで染まった溶岩の海にサボテンの針が雨となって降り注ぐことで文意は冷えて固まり 明喩と隠喩が皺だらけのの紙面の上で辞典に掲載される時の単位の中で最も長いものよりももう一文字分だけ長い時間をかけて生まれた最初の生命は極彩色の虎だった。

2024.2.3

 私は茫漠とした地平線に風穴を空けるのだという確固たる意志を持って洋上を飛翔する弾体。私を打ち出した大砲は鋳溶かされて月面歩行機械の一部品となっており そちらが良かったというボヤキは遥か後方。目標を撃滅するのだという司令官の声だけがいまだ私に張り付いており その司令官も私の脳内での音速の抽象化と再構成の中ですっかり厳しさやらは削ぎ落とされてしまって いまや黒鉄流動体製の外套から触手を形成し 私の鼠蹊部をぬっとりと撫でる三つ目の少女になっている。そり立つ私の高周波ブレード。バイブレーション。インフレーション……     
 穴を開ければ溢れ出すのはMステ大階段を照らす照明であり それこそが天国という名の物理法則に中指を立てる質量保存ガン無視再現性喪失の領域への近道である。ニュートンは天国からリンゴを落とすと鳥貴族が潰れる理屈を解明出来ずに地獄に身投げしようとして 吉鳥が潰れた。天国の端っこにはどうしたって論拠となるデータが取れずに嘆く科学者達の為のカウンセリングルームがあり 話し相手を務めるのは三途の川に道の駅を作る許可証をもらいに来ていた常田ゴンジくん(19)。彼の甘美完熟なカウンセリングを受ければたちまち祭囃子の音程は元通り 納得と満足のタンパク質がニーキュッパで生成され 大太鼓のp波s波の魅惑のセッションに刺激されて煌々と輝く。これが最も安価な太陽の製造方法だとされており ライン確立の為ゴンジくんはずっと違う場所に道の駅を立てる許可証ばかりを交付され続けている。太陽光発電の機械の為の発電のような冷笑的矛盾は 古代アステカの祭儀を見よ! という言葉一つで解決する。私も生贄なのか。サクリファイスなのか。椅子になんて一度も座った事がないのに(弾体ゆえに)。弾体だからという理由だけで断ってきた幾つもの誘い。仕方なく断ったもの 弾体という事を利用して断りたくて断ったもの。列車砲も参加したあの日の飲み会はどちらだったか。嘔吐者の千本鳥居の中を肩で風切って進行したあの夜。あの頃はまだ気づいていなかったのだ私はどこにも着弾しないという事にという自己否定的まったくの虚実は極過音速スーパーソニックの負荷により木端となる。こっぱ。こっぺ。パン。柔らかいもの。ストーブの上で温めて食べたいもの。熱々のクリームシチューに浸してみたいもの。シチューのCMを見て感じる冬の訪れ このCMが流れなくなる頃には私は連綿たる発電史に革命を起こす為 真一文字に空を裂いているのだという諦めともまた違う唯一無二の破壊衝動に駆られていた私はまだ一度も何も壊した事がない。極超音速ハイパーソニックも突破して椎名林檎との連結リンクが切れた私は 孤独で無害な事をありもしない日に主張する鏑矢。今はいったい第何次宇宙速度なのか いったい何を振り切っているのか いったいここは何次元なのか 風穴を開けるべき地平線なんてもう墓から這い出てきたお婆ちゃんが傷だらけの位牌を縫うのに使ってしまってあと2ミリ。  
 誰かあの子は有害だと言ってやっておくれ! やめてよお婆ちゃ誰だあんた。