短い詩 いくつか

真冬の夜の冷気で頭がしびれる。
今なら心臓を抜かれたって気づけない。


オルカ。
最も強く美しい三文字。
オルカ。
鼓動と波の詩。


きみが思うよりきみは固いので。
ぼくへの想いで乱れておくれ。
きみが望む通りきみを砕くから。


有機的終末。
文明をたいらげた後の排泄の七日間は見るに堪えない。


バカ! この星は単四じゃなくて単三だって言っただろ!


「化石におおわれていると安心するの」
ヴェロキラプトルの顎に挟まれる彼女の頭。アンモナイトの義眼。
もちろん構わないさ。火葬のときに見分けさえつけば。
ところで尾が生えているのはきっと気のせいだよね。


きみが眠る時ぼくを起こして。
同じ夢にはいられないから。


FAXの途中で神詰まり。
それがこの世が不完全な理由ではない。
送信元も不完全なので。


部屋に狼がいる生活。
真夜中でも代わって慟哭してくれるのだ。
上の階の月は苦情を言う前に地平線に消えていく。


詩作は冬の季語でしょう。


神様は恋を実らせる力のみを持つ。
神様はその力だけで世界を創った。


数えきれないものを数えることのほうが
あなたをきらいになることよりよっぽど有益だ。


すりへったわたしがたどりつく楽園。
そこが燃えて灰になる光景を夢に見てわたしは安眠する。


ただの孤独をぽつねんと、なんて言葉であらわした人はきっとすごくやさしい。

2024.3.5

 画面の中の美少女に萌えないのは、触れられないのに触れなければ得られない快への欲を抱かせる構図がどうも合わず、巨きなものに心惹かれるのはそもそも触れられる対象ではなく、ただ畏敬の念を抱くしか出来ないからかと考えた。画面の中の全長18mだか40mだかの巨人と遠くに仰ぎ見る山嶺は同じ。

 美少女には萌えないが眼鏡には萌える。それもたぶん同じ理由で、画面の中の眼鏡も今目の前の眼鏡も触ってはいけないので。

 そんな感じ。

2024.2.14

フリーホールの詩

。で話は終わるけどアリスは穴に落ちてからが本番です
(落ちる 落ちる)
フォーリナーがフォールしたホールを開けたオープナー
(落ちて 落ちて)
神は3日で穴開けて3日で埋めて最後の1日に寝落ち寸前に世界を作った
(落ちた 落ちた)
埋め忘れの穴にフリーホール中詠む自由律俳句
(落ちろ 落ちろ)
空から落っこちてきたあの娘が見落とすところに三点着地
(落ち込む 落ち込む)
穴埋め問題 苦し紛れの冷たいギャグで滑って転んで
(落ち着く 落ち着く)
お力になれずにすいません 穴があれば入って思ったより居心地良くて君を誘いたい
(オチはない オチはない A Ah)

2024.2.12

 炎上するアストンマーチンの中で炊かれる粒立ちの良い米一粒一粒に刻まれた王国で暮らす尾を引く赤いでんぷんの糸で結ばれた少年少女。天体整地用最終ジャガーノート型彼女が地面の皺を伸ばし 少年はおもむろに靴を脱いですり減ったソールの空虚に明日食べるパンの言い表しようのない柔らかさを感じ取る。

 おおよそ人類史とは固くて重たいものを早く動かすことの技術史であり 柔らかくて軽いものは冷遇される傾向にある中で少年は完全な軟体の加速度に心奪われ ジャガーノート型彼女はガブルルルルと嫉妬に震えて液状化し 振動の熱で蒸発した。熱されて上昇する気体と赤い糸で繋がれたままの少年はカーマンラインを超え 無限軌道にならされた三代前の地球を見る。つやつやに磨かれた星から出来る辛口大吟醸の香気に酔って前後不覚の少年少女は米粒の輪郭からほんの少しだけはみ出し 炎上するアストンマーチンの中でピザを焼こうとするレーサーを宇宙人だと勘違いして オリーブを投げつけた。それを啄む鳩こそが稲穂に金メッキを施した異星よりのアンチパン(bread)の使者だと言うのに。

2024.2.7

 医療技術の発達により人の体内で発生する諸現象は明文化され 七転八倒九龍城もかくやという痛みの乱丁の原因が体内物質が凝縮して出来た胆石結石石炭がコロコロローリングする事によるものだと読解された。

 となれば作品進行において矛盾を生む障害物は撤去 ならびに再利用可能であればとりあえず試してみるというのがお天道様のお役所仕事であり そうして取り出されたもののうち石炭をまずは焚べてみて生まれたこの蒸気文明。ブッシュブッシュと雑草のように空に生い茂る白煙の下で 蒸気駆動の仏師が電気風呂の喪失を嘆いている。近場の銭湯では電気風呂は撤去されサウナが増設 汗をかかない蒸気機関者はあのバイブレーション感覚を夢見る間も懐かしみながら 仏を掘る。ガッショガッショと地面を掘れば合掌した仏像が現れる。仏師は満足げに顔面の人工筋肉を動かして仏を砕いた。亀裂から祈りが吹き出し 凝固。コロコロと採掘現場を転がる祈りは高品質なエナジードリンクの原材料であり それを飲みすぎると人は体内に石炭を作る。

 採掘資源である仏像はあと百年もすれば掘り尽くされると推定されており 人類は新たな採掘地を他の星に求め 宇宙進出用の銀河航行用蒸気機関車を目下開発中。

 天の光はすべていつか燃える石炭なのである。

この15日間と最近に含まれる明日以降に書くものについて

 最近の事とはつまり「最も近い」事であり、今日から最も近いのは昨日と明日である。つまり我々は世間話の中で既に自分の未来を確定事項としているのであり、例えば「最近紅茶にハマっている」のならば少なくとも明日までは紅茶にハマっていなければならないのではないか。仮に明日起きてもう紅茶はいいやとなっていればそれは「最近」紅茶にハマっていたのではなく、昨日までという表現が正確になる。



 元々私は影響を受けやすい性格でありその影響は書くものにも反映される(内容文体問わず)。それならば、なまじ影響を受けているとバレないように理性で押し隠すのではなく、自動筆記的に最近見たものの影響、それに対する思考思惑思想、無意識下からにじみ出る何かしら、そういったものを区別せず分別なくぶちまけてしまえや、という気になってとりあえず実際にそうしてみている。そういう書き方をしていると読点とは非常に邪魔のように感じられて、可読性へのせめてもの情けとしてスペースを開けるようにしているが本当はダダッと濁流のように書きたい気持ちがある。
 だから餅の話をしている時は餅を食べたのだろうし、巨人、飛行機械、サボテン、それらについてもそういう塩梅で書かれている。ルートはシンプルだがすべてを一本化するのではなく、むしろ滅茶苦茶にラインを増やして入り組ませることで結果として出来たスパゲッティコードから何かをすくい取れたらという試み。
(くだらないものが好きで
くだらなくて格好いいものが大好きで
くだらなくて格好いいもので天地創造したくなる)

2024.2.5

 四本脚の蜘蛛は人と虫どちらに近いのかと問いかける将軍様は 36インチのテレビから引きずり出される時に頭をぶつけて怒り心頭のスフィンクスの二面ダイスが3回連続で素数を出す確率はいくらかという謎かけに答えられず 代償としてのっぺらぼうの大いなるマネキンとなった。
 時と心とカフェオレに可逆性は無いが 全身白紙の巨人はタブララサマンとして決して混ざらない直立不動のミルクのように世界の攪拌に抗っている。タブララサマンはそうしてせき止めたこの星の自転のエネルギーで気ままに奇跡を起こし かねてより切望していた気になる子たちにカタツムリの殻を背負わせるという願いを叶えた。
 渦巻き被害者の会の入会者は実際に渦巻きを背負っている人物よりも遥かに多くなり 潜在的に渦巻きを抱えている人物は思いのほか多かったのだとその時気づく事になる。生きるマドラーだという事であのそり立つ白濁した巨人の目を回そうと思い飛び込んでみれば会員制乳海だったことが判明。渦巻き被害者の会の会員は乳海入会者にもなり 須弥山かわりのサボテンの塔が屹立する。
 タブララサマンがこっそりと蓄えていた自転のエネルギーは崩壊し 辞典という形而下の形を持って描写される。あらゆる文字が隕石のように文脈を無視して飛び込み 修正の赤ペンで染まった溶岩の海にサボテンの針が雨となって降り注ぐことで文意は冷えて固まり 明喩と隠喩が皺だらけのの紙面の上で辞典に掲載される時の単位の中で最も長いものよりももう一文字分だけ長い時間をかけて生まれた最初の生命は極彩色の虎だった。