2024.2.3

 私は茫漠とした地平線に風穴を空けるのだという確固たる意志を持って洋上を飛翔する弾体。私を打ち出した大砲は鋳溶かされて月面歩行機械の一部品となっており そちらが良かったというボヤキは遥か後方。目標を撃滅するのだという司令官の声だけがいまだ私に張り付いており その司令官も私の脳内での音速の抽象化と再構成の中ですっかり厳しさやらは削ぎ落とされてしまって いまや黒鉄流動体製の外套から触手を形成し 私の鼠蹊部をぬっとりと撫でる三つ目の少女になっている。そり立つ私の高周波ブレード。バイブレーション。インフレーション……     
 穴を開ければ溢れ出すのはMステ大階段を照らす照明であり それこそが天国という名の物理法則に中指を立てる質量保存ガン無視再現性喪失の領域への近道である。ニュートンは天国からリンゴを落とすと鳥貴族が潰れる理屈を解明出来ずに地獄に身投げしようとして 吉鳥が潰れた。天国の端っこにはどうしたって論拠となるデータが取れずに嘆く科学者達の為のカウンセリングルームがあり 話し相手を務めるのは三途の川に道の駅を作る許可証をもらいに来ていた常田ゴンジくん(19)。彼の甘美完熟なカウンセリングを受ければたちまち祭囃子の音程は元通り 納得と満足のタンパク質がニーキュッパで生成され 大太鼓のp波s波の魅惑のセッションに刺激されて煌々と輝く。これが最も安価な太陽の製造方法だとされており ライン確立の為ゴンジくんはずっと違う場所に道の駅を立てる許可証ばかりを交付され続けている。太陽光発電の機械の為の発電のような冷笑的矛盾は 古代アステカの祭儀を見よ! という言葉一つで解決する。私も生贄なのか。サクリファイスなのか。椅子になんて一度も座った事がないのに(弾体ゆえに)。弾体だからという理由だけで断ってきた幾つもの誘い。仕方なく断ったもの 弾体という事を利用して断りたくて断ったもの。列車砲も参加したあの日の飲み会はどちらだったか。嘔吐者の千本鳥居の中を肩で風切って進行したあの夜。あの頃はまだ気づいていなかったのだ私はどこにも着弾しないという事にという自己否定的まったくの虚実は極過音速スーパーソニックの負荷により木端となる。こっぱ。こっぺ。パン。柔らかいもの。ストーブの上で温めて食べたいもの。熱々のクリームシチューに浸してみたいもの。シチューのCMを見て感じる冬の訪れ このCMが流れなくなる頃には私は連綿たる発電史に革命を起こす為 真一文字に空を裂いているのだという諦めともまた違う唯一無二の破壊衝動に駆られていた私はまだ一度も何も壊した事がない。極超音速ハイパーソニックも突破して椎名林檎との連結リンクが切れた私は 孤独で無害な事をありもしない日に主張する鏑矢。今はいったい第何次宇宙速度なのか いったい何を振り切っているのか いったいここは何次元なのか 風穴を開けるべき地平線なんてもう墓から這い出てきたお婆ちゃんが傷だらけの位牌を縫うのに使ってしまってあと2ミリ。  
 誰かあの子は有害だと言ってやっておくれ! やめてよお婆ちゃ誰だあんた。